2018年9月11日火曜日

VOICE 01/鍼灸師(北海道・男性)

 研修中は、吉川先生の素晴らしい治療に圧倒されて毎日が感動的でした。何年分にも値するような充実した研修でした。後半の研修では、地元の患者さんたちの顔が次々に浮かんできました。治療に行き詰まっている症状にあれもこれ も、きっと役立つはず、と。それと同時に不安もありました。先生の治療をといれたとしても、果たして私の未熟な治療で、どこまでできるだろう。
 
 まったく効かなかったらどうしよう?期待と不安が入り混じった気持ちで自分の治療院に戻りました。長いお休みをとった私を患者さんたちは待っていてくださいました。
吉川先生の治療をすべて一度に取り入れることは到底無理なので、まずは1週間ごとに目標をたて自分なりに実践していくしかない、と思いました。

* 1週間目 一番の圧痛点の効果的な遠位穴を探してみる
 
 東方鍼灸院では陰陽太極鍼法、巨刺、子午、経絡の要穴・・・などの理論を駆使して痛みをとっていました。患者さんにもインパクトがあり、局所治療にはない効果が得られていました。経絡のポスターの前でしばしば考え込みながらの悪戦苦闘でした。
 
 はじめは圧痛をとった時と、刺針後に押す指のちからを同じにするのがためらうほど緊張しました。でも、そんな不安は吹き飛ぶほどの効果がありまし た。残念ながら全員にではなかったのですが、数年来、治療を続けている患者さんばかりです。いままでの局所治療との違いを肌で感じ取って下さったようで、 大喜びで報告してくれました。
 
 顔面神経麻痺の後遺症による顔のこわばりには、足の「内庭」が、ききました。右足首の圧痛とむくみには左手首の「陽谷」がききました。目の疲れや 涙目には、胆経のツボが効きました。皆さん、こちらから聞かなくても、このつぼがいい、今のが効いた、など、はっきりと口に出してくださったのには本当に驚きました。

* 2週間目 腹診をする
 
 今までは、特に腹部の症状がなければ募穴の反応は見ていませんでした。でも全身の状態を見るのに、大切なのだと研修で実感しました。慢性疲労とか、特に痛みがない症状の時には、実際治療に行き詰まってしまっていたのですが、お腹を見ることで糸口がつかめるのだと思いました。そして、実際、さまざ まな反応が現れるし、経絡を治療することで、こんなに変化がある!症状も変わる!ということを、いまさらながら驚きました。

* 3週間目 刺さない鍼をしてみる
 
 この2週間、一度で効かないときは、同じ場所に刺しなおしたり、1ミリずらして刺してみたり、もう片方に刺してみたり。刺激を増やす方法で効かせようとしていました。1つののツボに何度もチャレンジして、やっと成功ということも沢山ありました
 
 普通に針管で刺しても効果がなかった時に、今度は刺さずに固定してみました。刺激は弱くなったはずなのに、そのほうが効果があったことが何度もありました。固定をするので私のように刺針に自信がなくても、取り入れることができます。浅い鍼のほうが効く、というのは実際にはじめて自分で体験してみて本当に不思議だけど、事実なんだなあと思います。
 
 この3週間の取り組みは、研修で見てきたことのほんの何十分の一にもならない発見ですが、見聞きしてきたことを実践できた貴重な経験となりました。鍼灸の経絡の魅力は、私のように小さな治療院の小さなベットの上にも、ちゃんとありました。そのことがうれしくてたまりません。今はやっと、鍼灸の世界の入り口に立ったところです.これから、まだまだ勉強しなければならないことがたくさんありますが、宝探しのように「きっと、もっ と効くツボがあるはず!」と、言う気持ちであきらめずに治療に取り組むことができるようになりました。(2007年)

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