2018年9月11日火曜日

VOICE 80/学生(北海道・男性)

 念願の東方鍼灸院訪問にワクワクしながら、厳寒の帯広を訪れました。初めて吉川先生にお会いしたのは、2011年の日本東洋医学会学術総会です。当時は鍼灸専門学校に入学したばかり、失礼ながら先生のことは存じ上げませんでした。何故か先生のセミナー会場だけ人が溢れて入ることができず、こんなに注目される内容が知りたくて体験治療コーナーを覗きましたが、そこも大盛況で入れません。
 
 終了間際に先生の実技披露があったものの後ろにいたため見えず、結局、陰陽太極鍼を知るチャンスだったセミナー・体験・実技公開の全てで、この手法に近づけないまま終わろうとしていました。たまたま隣にいらした東方鍼灸院のスタッフが、「体験すればわかります。研修を受け入れているので、一度来られては」と声をかけてくださいました。その時、「時間がないので、これが最後です。どなたかモデルになりたい方は」と先生の声が聞こえました。
 
 スタッフが、「あっ、すぐ手を挙げて」と背中を押してくださり、幸運にも最後のモデルとして体験させていただくことになりました。先生の施術は痛 みがないので、何をされているのかわかりません。ただ、先程まであった過敏な感覚、痛みが一瞬にして消失しているのはしっかり体感しました。見ていた方々 の感嘆の声、何故なのか理解できなかったのは恐らく自分だけだったでしょう。残念ながらそこで時間切れとなりましたが、鍼灸師を目指していながら刺鍼で痛みを与えることに違和感があった自分が、陰陽太極鍼に大いなる興味を抱くには充分な体験でした。
 
 スタッフから伺った研修の話は、それ以来頭の片隅から離れません。先生に最後のモデルとして体験させていただきましたとメールを送信、ご丁寧に返信をくださったことを覚えています。
 
 その後、先生がご講演される鍼灸学会や学友会に参加し、東方鍼灸院にお邪魔したいという思いが一層募っていきます。この度、急に時間を作ることができて先生にご相談申し上げたところ、快くお引き受けいただきました。こうして、東方鍼灸院訪問は3年半の歳月を経て実現することとなりました。
 
 実際の治療を拝見すると、先生は患者さんに何経の何という経穴かを説明しながら触れていかれ、お子さんまでもが経穴名を覚えてしまっています。患者さん全員が鍼灸師予備軍で自分より位置を正確に知っているのではないか、しっかり勉強しなおさなければと、臨床経験が乏しい新米鍼灸師としては大いに焦りました。
 
また、自宅でこうしたらここにあまり来なくて済むということまで、惜しげもなく披露されているのにも驚きました。常に患者さんと対話され、訴えに 耳を傾け、全身全霊で治療に当たられている先生、そのお人柄に魅かれて来院される患者さんも多いのではないかと思います。お疲れも見せず精力的に動かれる先生には感服しました。
 
 初日終了後、先生に体験治療をしていただきました。緊張とほとんど立ったままの状態で、いつもの自分なら疲れ切っているはずです。それに加え、この冬一番という寒さの帯広でしたが、帰り道は身も心も温かく、飛び跳ねたくなるほど体が軽くなっていました。何も知らなかった3年半前とは違った視点で、 陰陽太極鍼の不思議を感じずにはいられません。(2015年)

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