2018年9月11日火曜日

VOICE 52(長期研修)/鍼灸師(神奈川県・女性)

 2年前、鍼灸学校3年生の時に受けた1日だけの短期研修、その時の衝撃は今でも忘れません。吉川先生の下で研修をされた、目白鍼灸院の柳本先生に治療していただいていたため、「陰陽太極鍼」の素晴らしさは体感していましたが、見るのは初めてでした。吉川先生が迷わず置いていかれる鍼で、次々と患者さんの体が変化していく様子に驚き、絶対ここに来て勉強しなくては!と強く思ったことをはっきりと覚えています。しかし同時に、ここまで効果が高いのは、吉川先生だからこそではないか?という思いもありました。「そんなことないわよ。本当に誰でも出来るわよ。」そうおっしゃっていただいたこ とで決心が固まり、長期研修生としてまた帯広へやって来ました。

 実際に患者さんの治療をするようになって間もない頃は、反応や症状がなかなか取れないことも多く、自分の未熟さも考えず、やはり先生しか出来ない治療なのでは?と悩んだ時期もあります。しかし、鍼を置いた位置を先生に直していただいたり、敏感な患者さんが教えてくださる場所をよく触り、その感覚を指で覚えていくうちに自然と悩みは消えていきました。教科書通りの位置にはない活きたツボが探せるようになると、鍼を一本置く毎に体のあちこちの反応が取れるようになり、私の治療も結果が出るようになりました。
 
 鍼の位置を1ミリ修正する、それだけで症状が劇的に変わるという経験も何度もしました。「五十肩に王穴」「坐骨神経痛に胃兪」など、吉川先生の治療は臨床にすぐ役立つものばかりです。でもそれは、当たり前ですが、きちんとツボが取れているから効くのだと分かりました。知識だけの頭でっかちではダメで、鍼灸師として、やはり一番の基本は、手や指を作ることだと感じます。体表反応の変化を観察し、一本一本の鍼の効果を確かめながら行う治療では、その鍼が効いたか効かなかったか、が明確に分かります。患者さんにもその場で体の変化が分かるため、誤魔化しは効きません。だからこそ、指の感覚を鍛えられたのだと思っています。

 東方鍼灸院には、実に様々な症状の患者さんがいらっしゃいました。この症状にはこのツボ、そのような決まりきった治療法しか知らなければ、正直戸惑うような病名もありましたが、「陰陽太極鍼」はどんな病名・症状にも応用できました。症状や場所から、どの臓腑・経絡に問題があるかを予測し、あらゆる陰陽を考えながら、陰陽のバランスを調整でき症状が改善する治療法やツボを選ぶのですが、臨機応変にそれらを探し出す力を身につけられたことは、かけがえのない財産です。

 以前、担当していた患者さんの難治性の症状に対して、「本当に取れましたか?」と思わず笑ってしまったほど、思いもかけない治療点を見つけたこ とがありました。先日、吉川先生から、今でもその治療で患者さんが楽になっているとお聞きし、大変嬉しかったです。
 患者さんがどんどん良くなり、笑顔で帰って行かれる喜び。心身ともに回復し、どれだけ人生が豊かになったか、をお話してくださる患者さんもいらっしゃいました。未熟ながらも、吉川先生が信頼してくださり治療を任せてくださったからこそ、その喜びをたくさん経験することができたのだと感謝しております。患者さんが納得してお帰りいただけるよう、治療で確実に結果を出す、それは大変なプレッシャーでもありましたが、これからの一生を鍼灸師としてやっていく自信が持てるようになりました。

 研修中、私にとって好きだった時間の一つは、素晴らしく効いた治療など発見したことや、患者さんの症状改善の報告をし合う時でした。吉川先生のお話をう かがうのも大変勉強になりましたし、私たち研修生の報告を、先生が本当に嬉しそうに聞いてくださいました。先生は、時には治療をしながら、患者さんと一緒 に驚き、一緒に喜び、「鍼ってすごいわね。」と眼を輝かせることもあります。吉川先生の傍にいると、鍼灸を愛する気持ち、情熱が本当に伝わってきました。 東方鍼灸院に来てから、私もますます鍼灸の世界が好きになり、自分の選んだ鍼灸師という仕事に、心からやり甲斐と誇りを感じます。

 この度、実家の事情により研修を終了しましたが、多くの貴重な経験をさせていただき、大変充実した研修でした。日常の臨床だけではなく、吉川先生の DVD撮影、日本東洋医学会学術総会での実技セミナー助手・鍼灸サロンスタッフ、鍼灸の大家と呼ばれる先生との実技交流など、この時期に長期研修生として勤務できたことは本当に幸せでした。

 寒さも厳しい帯広に単身来ることは一大決心でしたが、代表、吉川先生、離れていても東方鍼灸院出身の先輩方がいつも気にかけてくださいました。長期研修生の同僚とは、美味しい物を食べに行ったり、道東をめぐり大自然に触れ、北海道の生活を楽しむことがで きました。全国から来られる短期研修生との出会いも大いに刺激になり、今も大切な仲間です。患者さんとの触れ合い、温かいお心遣いにも元気をいただきまし た。たくさんの方々に支えていただいた1年10ケ月でした。お世話になりました皆様に、心から深く深く感謝申し上げます。帯広に来て本当に良かったです。

 実家の神奈川では、「痛そう、熱そう、怖い」というイメージから鍼灸治療を受けたことのない友人・知人たちが、吉川先生の「刺さない鍼」に多くの興味と期待を持って、私の帰りを待っていてくれました。東方鍼灸院の患者さんは、怖がらずに安心して、ご自分の体の変化を楽しみながら治療を受けていらっしゃいます。研修で学んだことを活かし、もっともっと多くの方に鍼灸治療の素晴らしさを知っていただき、身近な医療として、さらには、調子が悪くなくても健康維持のために続ける鍼灸というものを広めていけたらと考えています。そのためにも、吉川先生のように、これからもより良い治療を求めて日々努力し、頑張ってまいります。(2012年)

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。