2018年9月11日火曜日

VOICE 54/鍼灸師(神奈川県・男性)

 東方鍼灸院での研修は驚きとともに始まりました。初日に吉川先生に治療していただいたところ、両肘に出ていた発疹が翌日には消えていたのです。この発疹は紫外線アレ ルギーが原因と思われ、薬があまり効かず、ここ2~3年夏になると悩まされていたものです。夏が終わるころには自然に治るので、「季節もの」とあきらめていましたが、一度陰陽太極鍼を受けただけで症状が治まってしまったので非常に驚きました。
 
 研修は吉川先生が行う治療を見学させていただくことが基本で、その他に昼休みに実技指導があります。私は最初に吉川先生に治療していただきまし た。実際に先生の治療を受けることで、開穴を探すための切経や首周六合、募穴診などの感覚を体感することが出来ます。なかでも切経は優しいフェザータッチ で、切経そのものが気持ちよく感じるくらいでした。
 
 実技指導では、研修生が吉川先生を治療する機会も設けられています。これが私にとって最も緊張する時間で、最終日まで普段の臨床ではかかない汗を手ににじませながらの実技となってしまいました。募穴診などの切診で患者さんにふれる時の手の力加減などは言葉では表しがたいものです。実際に切診を行い、先生に直接ご指導いただいたことは得難い貴重な経験となりました。
 
 研修に先立ち、吉川先生が書かれた論文や雑誌の記事、DVDなどは可能な限り目を通しておいたのですが、それでも先生の治療を間近で見ていると、思わず驚きの声が出てしまうことが何度もありました。百会にローラー鍼をするだけで言語障害のある患者さんのろれつが1分もかからずに改善してきたり、「開穴」に一つ王不留行や皮内鍼を貼るだけで、腓腹筋、募穴や首周六合の圧痛が一瞬にして消失するのを何度も見ました。
 
 初日は先生の治療を見学することだけで精一杯でしたが、3日目頃には吉川先生の治療法則のようなものがわずかながら見えてきました。自分なりに理 解できたことを先生に伝えると、先生は「全部陰陽よ。誰でも簡単に出来るわよ」とおっしゃっていましたが、私にとってはそう簡単なものではありません。一日の研修が終わり、ホテルで見学しながらとったメモを見ながら、「ああ、そういう事だったんだ」と後になって納得することもしばしばでした。
 
 また、先生は実に多彩な技と知識をお持ちでした。「開穴」ばかりではなく刺絡や耳鍼、棒灸に足底の反射区まで診断や治療に縦横無尽に駆使されていました。先生曰く、「患者さんが良くなるなら、何でも使えばいいのよ」と。先生が治療中の患者さんからの質問に丁寧にこたえ、一人一人の体質や症状に応じ た養生をアドバイスされていたのもとても印象的でした。
 
 わずか4日間の研修でしたが、はるばる帯広までやってきた収穫は大きなものでした。特に切診の手順と方法、ミリ単位で修正しながらの開穴の取り方 を実地で学ぶことが出来たのは私の今後の臨床に大きな変化をもたらすと思います。この短期研修で学んだことをしっかりと復習し、日々の臨床で少しでも患者 さんのためにいかせるよう、研鑽を積んでいきたいと思います。
 
 吉川先生は驚くほど何でも丁寧かつオープンに指導をして下さいました。しかし、短期間の研修で会得できるものはわずかです。「また改めて研修に来たい」と話した私に、先生は「いつでもいらっしゃい。でも、今度あなたが来るときにはどんな治療スタイルになっているか分からないわよ。」とおっしゃいました。私も4日間の研修で学んだことと、頂いたたくさんの資料をもとにまだ出来ないことや分からないことに挑戦し続けていきたいと思います。(2013年)

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